2027年度のリニア中央新幹線の開業に向け、名古屋市は栄地区一帯を国際競争力のある魅力と活気にあふれた新たな交流空間へと再生することを目的に、久屋大通公園の再整備を検討しています。公園全体の再開発に向けたこれまでの動きは、前回の記事にまとめてみましたので、そちらをご覧下さい。この記事では、公園内の3つの再開発エリアのうち、「南エリア」について触れています。尚、錦通~若宮大通までの同エリアについては、基本計画の素案等、今後の具体的な方向性に関するまとまったデータが無いため、これまでの紙面・ニュース等での報道事項をまとめました。
噴水南バスターミナルの移転
市バスターミナル(噴水南のりば)
名古屋市は、中日ビルと栄三越の間にある市バス噴水南のりばを「オアシス21」周辺に移転させ、跡地の約1.25ヘクタールを「南エリア」の中核的な再開発用地として活用します。移転先となる新しいのりばは、早ければ2017年度に設計・着工、2018年度中の完成を目指します。南エリアの整備は2018年度以降に本格化させるとしています。(2017年1月26日建通新聞)
追記:噴水南のりばの2018年度の移転後、2020年度まではのりば跡地の暫定利用を検討するとしています。その後、北・テレビ塔エリアの再開発の完了後、本格利用に着手する予定です。(東京五輪が開催される2020年が目安)(2017年5月18日建通新聞)
同のりばには5つの市バス停留所があり、南区方面への「基幹1」系統や、藤が丘や高畑方面への「深夜バス」、大高方面への「高速1」系統などが乗り入れています。1967年(昭和42年)の供用開始から半世紀にわたって利用されてきましたが、老朽化が進んでいます。
集約化頓挫の過去
左:17~19番のりば 右:21~22番のりば(20番は欠番)
元々栄地区を発着する約20系統ののりばは、噴水南のりばと周辺の路上停留所に分散しており、すべて1箇所に集約化する方向で古くから検討が進められてきました。本当ならば2002年に供用開始した「オアシス21のりば」がその役目を担う予定でしたが、経費削減のため噴水南のりばは存続させることとし、路上停留所の一部も残る形となりました。しかし、15年後の今、再びオアシス21付近への集約化計画が浮上している中で、初めからオアシス21へ集約していれば噴水南のりばも早期に再開発ができたのではと思います。
噴水南のりばの東向かいには「中日ビル」が立地しています。中日ビルは2016年9月に建替えが発表されており、閉館予定が2017年度末(2018年3月)と、南エリアの整備着手時期より一足早く閉館する予定です。噴水南のりばと中日ビルの連携した再開発が期待されます。
臨時駐輪場
歩道上の放置自転車対策として、噴水南のりばの北側に設けられた臨時駐輪場です。三蔵通りや伊勢町通りの歩道上にも駐輪場が整備されましたが、景観上の観点から考えると大名古屋ビルヂングのようにまとまった駐輪場を整備すべきだと思います。
閉館予定の中日ビル
1966年(昭和41年)竣工。地上12階、地下4階建て。延床面積は84,491.7平方メートルで、オフィス・商業・劇場を備えた複合ビルです。既に阪神大震災級の地震への耐震性は確保されていますが、東日本大震災後に「南海トラフ巨大地震の被害想定」で名古屋市の最大震度が引き上げられたことにより、建替えが決定しました。尚、新ビル内に中日劇場の後継劇場は設置しない予定となっています。近隣では、先行して興和(株)が2018年度以降の着工を目指して丸栄本館と栄町ビルの建替え計画を発表していましたが、同被害想定を受けた直近の報道では「補強・建替の両面から検討」と、明らかに構想がトーンダウンしているのが気がかりです。
久屋駐車場出入口(地下)
噴水南のりばの地下には市営久屋駐車場がありますが、おそらくこの駐車場も、再開発により廃止もしくは代替駐車場を整備すると思われます。名古屋の中心部ですが、このあたりの風景は50年近くほとんど変わっていません。
バスのりば・おりば移転先
新バスのりば予定地付近
移転に際しては、現行の「噴水南のりば」との同等設備(待合上屋など)を整備するとしています。
新バスのりば予定地(現行降車場)
オアシスのすぐ西側、久屋大通上にある現行の降車場を新たなバスのりばとして活用します。乗客の退避スペースを併設します。
オアシス21
右側の地上部分、久屋大通の歩道上に新しいのりばが整備されます。
栄バスターミナル(オアシス21のりば)
オアシス21のりばは、1階と地下1階の間の半地下フロアにあります。2002年に供用が開始されました。元々は地下1階に整備され、全ての路線が集約される予定でした。
市バスターミナル(オアシス21のりば)
全部で10の乗り場があり、1~7番が市バス、7~9番が名鉄バス、10番が三重交通の乗り場となっています。(7番は市バス・名鉄バス兼用)桃花台や豊田市への高速バス、セントレアリムジンなども当ターミナルから発車します。三重交通は長島リゾートへの高速バスを運行していますが、「イオンモール名古屋茶屋」への直行高速バスは、2017年5月8日より当ターミナルから名鉄バスセンター(名駅)発着に変更となります。
新のりば・おりば整備予定地付近
オアシス西側の久屋大通上とは別に、東側の芸術文化センターとの間に新しいのりば・おりばが整備されます。
栄バスターミナル入口
新しいのりば・おりばは、入口を通過して「NHK放送センター」交差点手前にある駐輪場のスペースに整備されます。
新バスのりば・おりば予定地(現行駐輪場)
写真を紛失したため、ストリートビューでごめんなさい。。。右に見える駐輪場のスペースに、バス5台分の乗り場・降り場を整備します。ただ、立地的には徒歩だとかなりアクセスしづらい場所です。現在の無料駐輪場は収容台数200台となっていますが、同等規模の代替駐輪場を付近に整備します。
そのほか南エリアの公園内を見てまわり
愛の広場(完成時期不明)
久屋大通公園の中で一番芝生広場らしい場所です。モニュメントが多数設置されています。市バスターミナル「噴水南のりば」のすぐ南側にあります。
全体的に段差が多く、完成当時のままのため昭和の空気が漂っています。弁当を広げるにもイベントを開催するにも中途半端な広さです。
久屋大通付近は一部エリアで高低差があり、北行き車線よりも南行き車線のほうが低い箇所があります。
エンゼルパーク駐車場出口
愛の広場よりエンゼル広場を見たところです。間を三蔵通りが分断しています。久屋大通公園には地下駐車場がいくつかありますが、市が中核的な再開発を検討している「噴水南のりば」の地下(久屋駐車場)は閉鎖するにしても、その他の駐車場の処遇が明らかになっていません。駐車場を残したままだと地面を掘り起こせないため、出来ることが限られてきます。
全体的に公園内の緑地帯が沿道と公園の行き来を遮断しすぎてしまっていることから、久屋大通の歩道拡大と合わせて改善が検討されています。
エンゼル広場(1972年完成)
エンゼル広場
全体的にフラットな空間となっており、テレビ局やラジオ番組のイベントを初めとするさまざまなイベントに活用されています。大規模なものだと、南に隣接する「久屋広場」「光の広場」も含めた一体的なイベント会場となる場合が多いです。
エンゼルパーク駐車場入口付近
このあたりは公園地下の駐車場で東西が分断されているほか、広場が駐車場の上にあるため、大通公園の中でも高低差が最も大きくなっています。また、駐車場の稼働率が高く、空車待ちの車で休日は久屋大通が非常に混雑します。
久屋広場(1968年完成)
エンゼル広場の南側にあります。現在の姿は完成後にリニューアルされた後のものと思われますが、ほぼイベントに特化した空間となっています。
久屋広場のステージ
大規模なイベント時に特設ステージを設置できるスペースがあります。
久屋広場は公園内でもっとも広いイベントスペースとなっていますが、常設売店や案内所などが欲しいところです。
エンゼルパーク駐車場入口(南側)
広場の下に潜りこむ駐車場。沿道には空車待ちの車列ができています。 仮に公園内のすべての駐車場を再開発する場合、受け皿となる駐車場も必要になってくるので、南エリア内でも段階的な再開発が想定されます。もっとも公共交通機関の利用促進が進めばいいのですが…
アリーナの整備
久屋広場から見た「光の広場」(1989年完成)
市は、久屋大通公園の「南エリア」を”にぎわいの空間”として、イベント空間の充実や集客・交流性の向上を図る方針を打ち出しています。その起爆剤として、矢場町エリアに近接する「光の広場」に、スポーツイベントやコンサートなどに対応したアリーナの建設計画が浮上しました。収容人数は5,000人を想定しており、2026年のアジア競技大会開催を控え、スポーツ産業の底上げによる魅力ある街づくりを目指していくとしています。2017年度はまずアリーナ建設に向けた課題を洗い出し、アジア大会までの完成を目指していく方針です。
光の広場と矢場町エリア
光の広場周辺には、松坂屋南館やパルコなどが立地しており、元々若年層を中心に集客性の高いエリアでもあります。また、地下鉄矢場町駅の出入口も近く、利便性も高いです。
光の広場には、1951年~1964年まで「エンゼル球場」があり、森永製菓がスポンサーであったことからその名残が「エンゼル広場」などの名称に残っています。
【参考】栄バスターミナル、オアシス21周辺に集約 名古屋市(2017年1月15日 朝日新聞)
【参考】久屋大通公園にアリーナ整備へ アジア大会までに(2017年3月18日 中日新聞 ※リンク切れ)
【参考】丸栄 補強・建替の両面から検討(2017年3月29日 建通新聞 ※会員版)
【参考】中日ビルの建て替えについて(2016年9月28日 中日新聞)
※すべて2017年4月23日撮影。