名古屋市交通局は、名古屋市営交通事業経営計画(2015-2018)の一環として、地下鉄伏見駅構内に初のエキナカ店舗を整備します。2016年度当初予算に計上した事業費(3000万円)を確保できれば、設計や工事事業者、入居テナントの募集を行う予定です。2017年度に着工し、2019年度中の開業を目指します。
最大10店舗を想定
気になるエキナカの規模ですが、計画では伏見駅コンコースの「中改札口」から「南改札口」までの区間に、最大1,000㎡(10店舗)までを上限に飲食や物販店などを誘致します。一部紙面に掲載されたイメージパースを見ると、従来の交通局では考えられないかなり気合の入ったリニューアルが実施されるようですが、あくまで"イメージ”で実際の設計はこれからなので、油断は禁物ですね(笑)
整備エリア付近の現在の様子
南改札口(鶴舞線)
地下鉄伏見駅の南端にある同改札口は鶴舞線専用となっており、ここから東山線ホームへ行くことはできません。中改札口に比べ、利用者数はあまり多くありません。
南改札口コンコース付近(改札外)
伏見駅は名古屋、栄、金山に次ぐ主要駅のため、東山線などの他駅のように配管むき出しということもなく、手入れの行き届いたコンコースです。
サークルK名古屋伏見駅南店
こちらはエキナカ開業後も存続されることになっています。
伏見サービスセンター跡地
かつて磁気定期券の発行・更新手続きなどが行われていました。ここから先、中改札口まではまとまった空間があるため、エキナカ整備の対象エリアとなります。空間は区分けするか区画の広さを生かしたテナントを誘致すると思われます。
IC乗車券「manaca」の普及により、券売機でも定期券更新ができるようになったため、窓口業務は名古屋駅など一部の駅を除いてお役御免となりました。最近は航空券も機械で簡単に搭乗手続きができるようになり、便利な世の中になったのを実感するのと同時に、人対人のやりとりがなくなるのにはちょっと寂しくもありますね。笑
南改札口から中改札口・東山線ホーム方面
南北に延びるコンコースは、途中に高低差があります。東山線のホームが地上からかなり浅い場所にあるためですが、テナント整備に支障が出そうですね。
伏見駅駅長室
先ほどのサービスセンター跡地からの並びにあります。この駅長室も移転させ、跡地に商業テナントを誘致します。
中改札口(東山線・鶴舞線)
地下鉄東山線のホームがすぐ奥にあり、利用者数は多いです。この先はエキナカ整備の対象エリアには含まれません。改札内にある「サークルK名古屋伏見中央店」も残ります。
コインロッカー・休憩スペース・トイレ
中改札口前にあるこのスペースは、おそらくエキナカ整備の対象になると思われます。
伏見駅のからくり人形
伏見駅は「御園座」のアクセス駅でもあるため、1997年に御園座が創業100周年を記念して名古屋市交通局に寄贈したものです。毎日8時~21時の毎正時に作動し、観光案内などを伝えてくれます。エキナカ整備後の処遇は不明です。
中改札口付近から南改札口方向
一帯にエキナカが整備される予定です。
駅長室(右)付近から南改札口方向
一帯にエキナカが整備される予定です。
「エキナカ」ビジネスの動向
名古屋の地下鉄でも金山駅のコンコースなどには、既にカフェや珈琲専門店などのある店舗エリアがあり、そもそも"エキナカ”の明確な定義が微妙なところですが、今回は運輸事業以外での収益の柱として、駅構内での本格的な商業展開を進めるという目的の下で検討されているプロジェクト"第一弾”と解釈しています。「エキナカ」事業はJR東日本などが大いに得意としている分野ですが、少子高齢化に伴い鉄道利用客の大幅な増加が見込めない中、従来は「電車・駅を利用するついでに店に寄る」というスタンスだったのが、今では「エキナカの店に買い物に行くために鉄道を利用する」といった習慣が生まれている地域(特に関東地方)もあり、鉄道利用客の消費活動が大きく変化してきています。
直近の名古屋近郊エリアでは、昨年12月にJR豊橋駅在来線の改札内に、雑貨店や小規模スーパーなどを誘致したエキナカエリアが誕生しています。また、名鉄は自社初のエキナカブランド「ミュープラット」を、2014年より金山駅にて展開しています。
ちなみに、今回名古屋市交通局が「市営交通事業経営計画(2015-2018)」内で事例として掲載しているのは、大阪市交通局が展開している大阪市営地下鉄難波駅構内の「ekimoなんば」です。伏見駅に実際にどんな店舗が誘致されるのかはともかく、事業の位置付けとしては大いに期待できそうです!
※2016年1月10日撮影。(一部2016年1月11日撮影のものに差し替え)