またも年末にビッグニュースが飛び込んできました。通な方々は既にご存知のとおり、名鉄・近鉄名古屋駅の共同再開発計画の全容が明らかになってきたため、緊急レポートします。
今年で開業60周年を迎えた「名鉄百貨店本店」。今年1月の各紙の報道では、百貨店の存続を前提とせず、百貨店業態から専門店への転換を視野に入れているとありましたが、今回の報道では再び存続を前提といったニュアンスの内容になっています。ただし、100%ではないため、引き続き業態転換も検討していくようです。
報道によると、名鉄・近鉄・三井不動産の3社は、名鉄百貨店本館~名鉄レジャックにかけての5棟のビルを解体し、約26,000平方メートルのエリアに最大2000億円をかけ、地上50~60階建ての超高層ビルを建設するとしています。年明けに近鉄・三井不動産に素案を提示し、費用負担・区分所有権の割合を検討、来年3月に本計画をまとめる予定です。新ビルには「名鉄名古屋駅」「近鉄名古屋駅」「バスセンター」のほか、商業施設・オフィス・ホテル・マンションが入る予定になっています。規模はJRセントラルタワーズと"同水準”とされており、高さは今後も変動がありそうですが、仮に60階となれば、大阪市の「あべのハルカス」(地上60階・300m)に匹敵する規模となります。(最大60階は日経新聞の報道)ホテルは名鉄系に代わって外資系ブランドを誘致し、マンションは単身向けを想定しています。今回の再開発計画にあたり、2013年10月に250億円のユーロ円建て新株予約権付き社債を発行し、名鉄としては初めて海外市場から資金を調達しています。現在の名鉄名古屋駅に繋がる名鉄バスターミナルは、完成当時「東洋一」と言われていましたが、今回の計画にもその心意気がしっかり籠められている気がします。まさに社運をかけたビッグプロジェクトになるので、さすがに中途半端に終わらせるわけにはいきません。今後の続報を期待したいところです。
三井不動産が所有する「大手町建物名古屋駅前ビル」です。旧名鉄百貨店メンズ館で、現在は「LABI名古屋」が入居しています。今回の各紙の記事には、ここへ来て「三井不動産」の名前が大きく前面に出てきています。これまではどちらかといえば「名鉄」「近鉄」が報道の主体だったことを考えると、再開発計画がかなり動き出していることがうかがえます。
太閤通りを挟んで南に位置する「名鉄レジャック」。計画では、ここまでの範囲をすべて一つのビルとしてつなげる予定です。イメージとしては、JR京都駅の駅ビルの上に地上50階の超高層ビルが乗っかる感じでしょうか。。。
さて、今回再開発ビルの建設にあたり、新ビル内に名古屋高速を接続させる案を、名古屋市が名鉄側に打診していることが判明しました。名古屋駅に名古屋高速を直結させる構想は当ブログでもご紹介しましたが、当初駅西で挙がっていた構想がいつの間にか駅東の話に変わっていたことにまず驚きました(笑)。こちらも年明けに具体化に向けた検討が開始される予定です。
名古屋駅とその周辺の高速出入口の位置関係です。周辺には、都心環状線①錦橋出口・名駅入口と、万場線②黄金(こがね)出入口の2つの出入口がありますが、いずれも渋滞が慢性化しており、高速を下りて名古屋駅に向かうにはかなりの時間がかかっています。特に錦橋出口は駅と反対の東向きの流出路になっているため、Uターンもしくは迂回しないと駅までたどり着けない状態です。当初の協議では、駅西(太閤通口)にサービスエリア付きの駅ビルを建設し、そこへ名古屋高速の出入口を設置する構想でしたが、JRや近鉄といった既存の線路を超える必要があり、高架・地下のいずれの工法も莫大な費用が想定される他、景観悪化による地元住民からの反対もあり、駅の東側へ接続させる方針へ転換(?)しつつあるようです。新たな案としては、新洲崎JCTから北西方向に高架を建設し、名鉄バスセンターへの誘導路を経由して再開発ビルに接続させる案(緑のライン)、もう一つは錦橋から西へ400m高架を伸ばしてダイレクトに接続させる案(青のライン)の2つの案が挙がっています。
建通新聞によると、市は先月に名古屋駅と名古屋高速のアクセス向上策に向けた検討業務をコンサル会社に委託していますが、そこでは駅西の太閤1丁目交差点から太閤通口にかけての、都市計画道路椿町線の立体化も含めた検討を行うとしています。椿町線を地下化して地上部に歩行者の滞留空間を構築するのであればアリかなとは思います。ただし今回の構想と並行しての話なのか、今回の報道によって選択肢から外れたのかどうかは不明です。
名鉄本社の裏側に建つ、名鉄バスセンター(左側)。名駅南の下広井町交差点から、名鉄線沿いに誘導路で接続する形になっています。構想では、新たに建設した再開発ビル内に名古屋高速のスマートインターチェンジを設け、バスや一般車両が出入りできるようにするという全国初の試みが検討されています。
太閤通をまたぐ箇所は、耐震工事が既に完了しています。
レジャックの南側、日本生命ビルとの間から見た誘導路。高架を上る途中で3層に分かれます。再開発でてっきり解体するものと思っていたので、今回の報道にはかなり驚かされました。
バスターミナルの高架を高速出入口に転用とは前代未聞の話ですが、 かなり古い誘導路でコンクリート部分は老朽化が著しく、大掛かりな耐震化工事は必至です。
そして西側スレスレには名鉄線が走っています。この状況でどうやって工事をするのか想像もつきませんが、終電後に工事をやるとすれば相当な難工事になります。電車も1時間あたり最大28本通過する超過密ダイヤとなっています。
名駅南の「下広井町」交差点から見た名駅方面(名駅通り)の様子です。左側にバスセンターの出入口があります。右手前が新洲崎JCT方面です。誘導路に名古屋高速をどの高さで接続するのかがポイントになりますが、出入口をまたぐ形で建っている東邦ガスの「名駅南エネルギーセンター」含め、その周辺のビルのいずれかを解体する必要があります。また、名駅通りの地下には笹島交差点からの歩行者用直通地下通路がちょうどこの地点まで建設されるため、高速が完成しても最低限歩行者の動線は確保されます。
振り返って見た新洲崎JCT方面。このように片側5車線の広大な道路を完全に持て余している状況です。高速が出来ることによって名駅南地区が孤立してしまうのではという見解もありますが、この現状では高速道路の建設が直接的に周辺の環境を左右するとは言い難いです。(関係者からの回し者ではありませんのであしからず…^^;)
中日新聞に橋脚と下水管との干渉の問題が挙げられていましたが、大規模な下水トンネルの埋設工事が行われた付近です。(写真中央部のコンクリート舗装の新しい箇所)中央に橋脚を建てると下水トンネルに負荷がかかるおそれがあります。橋脚を両側から跨ぐように建てれば大丈夫?
一方、こちらは名鉄本社ビルから東へ200m、錦通上にある名古屋高速都心環状線の「名駅入口」です。名古屋駅に一番近い「錦橋出口」はここから更に300m東にあります。出口は信号で交通制御されているため渋滞が多く、駅に向かうにはぐるっと迂回する形になるため、かなり不便です。
錦通の地下には、地下鉄東山線が通っています。かなり浅いところにあるため、新たに橋脚を建てるのも難工事になります。
名駅入口の進入路。奥は再開発予定の名鉄本社。錦通から直結させる「錦橋案」だと、この高架を造り直す必要があります。
都心環状線との合流地点。手前は「名駅入口」の進入路、奥は「錦橋出口」の流出路です。都心環状線は右から左への一方通行になっていますが、本線から名駅方面(手前方向)へ高架を新設しようと思うと、スペース的にはかなり手狭な状態で、こちらも用地取得が必要になります。
また続報があれば、追ってレポートしたいと思います。
※写真は2014年12月28日(一部2014年1月19日)撮影。