中部空港隣接の前島では、近年商業施設の相次ぐ開業で活況に沸いていますが、空港島でも様々な動きが出てきたので、まとめてレポートします。
出典 愛知県展示場計画 県プレスリリース
空港島 各新施設配置図
2017~2019年度にかけて空港島に開業予定の各施設の位置関係です。現ターミナルビルより南側のエリア一帯にて、複数の大型施設の建設が計画されています。
中部地方の”航空機産業”をセントレアから発信!
出典 ボーイング社 公式サイト
ボーイング社 787ドリームライナー飛行試験初号機(ZA001)
同機は、ボーイング社787-8型機の飛行試験初号機(ZA001、登録番号N787BA)で、787で最初に製造された機体です。主翼や胴体など、同機の構造部位の約35%が中部地方にて製造されており、2015年2月にシアトルからセントレアへ"里帰り”し、同年7月7日に贈呈式が行われました。現在はターミナルビル南側の隅に駐機されていますが、大々的な展示施設の建設が計画されています。
※飛行試験3号機(ZA003)は2014年11月にシアトル航空博物館へ、飛行試験2号機(ZA002)は2015年3月にアリゾナ州ピマ航空博物館へ寄贈されています。
出典 セントレア 公式サイト プレスリリース
新複合商業施設 イメージ図
歴史的価値のある787飛行試験初号機を、新設される商業施設内に展示し、教育コンテンツも併設することで、航空に対し若い人々にも広く興味を持ってもらい、次世代の航空機産業を担う人材育成に繋げていく狙いです。商業エリアでは、シアトルを中心としたアメリカの雰囲気を演出し、魅力的な飲食、物販店舗の出店を検討しています。開業は2017年度下期の予定です。(記事作成時点での予定)
エプロンの外れで出番を待ちわびる 787初号機
すでに機体はスタンバイしており、第二の人生の晴れ舞台の一刻も早い完成を待ち続けています。
新複合商業施設 建設予定地付近
空港島の南側、一般車周回道路の内側を中心とした敷地に建設されます。右に見えるデッキは、アクセスプラザから伸びる各立体駐車場への連絡デッキ。現状新商業施設への歩行者動線が無いため、このデッキを延伸する形で接続させます。
国際展示場 建設予定地方面
デッキは、周回道路の外側を通って国際展示場(後述)方面へも延伸する予定です。
ターミナルビル南側付近から、空港島南エリア方向。
駐車場連絡デッキ
中部国際空港駅のある「アクセスプラザ」や、旅客ターミナルビルへは動く歩道で直結しています。
愛知県が空港島内に独自で国際展示場を建設へ!
出典 愛知県公式サイト プレスリリース
新国際展示場 イメージパース
愛知県と名古屋市は、東京オリンピックが開催される2020年までに、ポートメッセなごや(展示面積約3万5000㎡)を補完する新たな国際展示場の建設を掲げてきました。
以下これまでの大まかな流れ(複数紙面・議員ブログより)
2012年夏? | 名古屋市がポートメッセなごや第1展示館の金城ふ頭駅南への移転計画を発表。 |
2013年9月 | 名古屋市が定例市議会にて展示面積10万㎡を超える展示場の建設計画を発表。(ポートメッセの新1号館も含め、総面積10万の意味と思われる) |
2014年10月 | 愛知県が新たに10万㎡規模の国際展示場の建設計画を発表。 名古屋市担当者「寝耳に水」。このとき市の展示場候補地は稲永ふ頭。(既存倉庫の移転補償や時間的な制約面から、実際は大村知事が河村市長に稲永案は不可能と再三伝えるも、河村氏側が聞き入れなかった説) |
2016年1月 | 名古屋市が展示場新候補地(空見ふ頭)を県に打診。共同事業を提案。 |
2月 | 愛知県が空港島に独自で展示場計画を進めることを決定(6万㎡・拡張で8~10万㎡) 大村知事「既に2年待った。東京で開催される多くのイベントを呼び込むには、五輪に間に合わせることが必達で、共同事業では間に合わない」。 |
5月 | これを受けて名古屋市も空見ふ頭への単独での展示場(5万㎡)計画を発表。 大村知事「県の展示場とポートメッセを拡張してからにすべき」と河村市長を批判。 |
6月 | 空港島内の予定地にて、ボーリング調査開始。 |
と、かなりグダグダな流れをたどってきました。
施設は東京オリンピックに間に合わせるため、「倉庫レベル」の最低限の設備に止め、事業費も約350億円(展示場単体は約300億円)と徹底的にコスト削減を図るとしています。
県の狙いはコミケなどのビックイベントか?
出典 ビッグサイト 公式サイト
東京ビッグサイト(東京国際展示場)
東京オリンピックに間に合わせる背景としては、「東京ビッグサイト」や「幕張メッセ」が一時的にメディア施設・競技会場として使用できなくなるためで、ビッグサイトは2019年度から一部施設が、2020年度からは全館使用ができなくなります。特に1回の総動員数が60万人を超え、ビッグサイト全館が貸切状態となるコミックマーケットは計3回分の開催期間にあたり、多大な影響が予想されています。現在ビッグサイトでは、改修工事の始まる既存展示場の仮設代替施設として新たに東新展示棟(東7~8ホール・計1万5,880㎡)を建設しており、五輪期間中の代替も含め、2016年秋から10年程度の暫定使用を予定しています。これに加え、東京都も東京テレポート駅近接地に2019年4月からの1年間使用可能な約2万4000㎡の仮設展示場を建設しているほか、五輪のメディアセンター用に建設予定の約2万㎡の拡張棟を2019年6月の完成に前倒しし、一時的な展示場不足に対応するとしています。これにより、2019年度に限っては最大6万㎡弱の新たな展示スペースが設けられることとなり、通常開催されるイベントの約9割をカバーできるとしています。これは関係者からの「ビッグサイトが2年連続で使用できなくなる事態は回避して欲しい」との声に応えたものと思われます。また、拡張棟は五輪終了後に展示ホールに転用される予定で、五輪終了時点で、ビッグサイトの総展示面積は約11万㎡にまで拡大します。
出典 幕張メッセ 公式サイト
幕張メッセ(千葉市美浜区)
問題はビッグサイトの既存施設が全館使用不能となる2020年度です。当初使用予定になかった幕張メッセ(約7万5000㎡)も、ビッグサイトで開催予定だった一部競技の会場として使われることになりました。ただし、ビッグサイトのように1年丸々使用不可ということはないので、ファンの間では時期をずらせばコミケを幕張メッセで開催できるとの見方もあるようですが、1991年に幕張メッセで開催予定だったコミケが当時の社会的情勢により直前で晴海に会場変更となった経緯から現在は幕張で開催できない、待機列スペースが狭い、2020年は五輪開催真っ只中で警備の人手が不足するなどの問題もあり、ほかに代替候補地としてインテックス大阪(大阪国際見本市会場・約7万3000㎡)もしくは常滑の新国際展示場(約6万㎡)が有力視されているようです。
出典 愛知県公式サイト プレスリリース
新国際展示場配置図
当初愛知県は、国内最大規模の約10万㎡の展示場計画を打ち出していました。現計画によると、2019年の開業時点では、ホール数は全部で6つ。総展示面積は約6万㎡です。将来拡張したとして、最大で約8~10万㎡。五輪関係なく長期的な視点で見ると、総展示面積では拡張後のビッグサイト(約11万㎡)を下回る規模となっていますが、これは後から浮上したビッグサイトの相次ぐ拡張計画を考慮していないためと思われます。今から計画を見直すと東京五輪に間に合わないため、このまま計画は進められることでしょう。
出典 愛知県公式サイト プレスリリース
新国際展示場(1~5ホール)内部イメージ
中身を見てみると、工期短縮とコスト削減のため、1~5のそれぞれのホール内には柱を設置し、可動間仕切りは設けず、シャッターを設置するとしています。幕張メッセ9~11ホールやビックサイト東展示棟は、可動間仕切りによって最大3ホール分の連続した無柱空間(それぞれ最大展示面積1万8,000平方メートル/2万5,690平方メートル・最大天井高28メートル/31メートル)を形成できることを考えると、柱が干渉し、かつ空間の組み換えが自由にできない新展示場は、ローコストの実現で低額料金での利用ができるのは良いとしても、スペック面ではやや痛手のように感じます。
出典 ビックサイト 公式サイト
東京ビッグサイト東展示棟内部(ホール間の可動間仕切りを完全に撤去可能)
可動間仕切りを取っ払った様子です。互いのホール内部には柱が一本もなく、あらゆるイベントでの使用用途に柔軟に対応できる造りになっています。やはりある程度のお金をかけなければ、ここまでの施設は実現しません。国際的なイベントまで見据えたものを造るのであれば、最低限ポートメッセを超えるスペックが必要だったように感じます。
出典 愛知県公式サイト プレスリリース
新国際展示場(1~5ホール)内部イメージ
1~5の各ホール間には、このように高さ6メートルのシャッターが設置されますが、可動仕切りではないため見通しも悪く、非常に圧迫感を感じます。五輪後を考えた長期的スパンで見れば、このスペックでは各ホールをぶち貫いた広い空間でのイベントが可能なビッグサイトや幕張メッセには勝てません。ただし、インテックス大阪はそれぞれの展示ホールが完全に独立しているため、総展示面積や1ホール単独での展示面積では劣りますが、使いやすさや首都圏からのアクセスの良さでは常滑の新展示場が上回ると思います。まずは長期的ポテンシャルよりも五輪開催中の経済効果を優先した県の判断が、はたして吉と出るか、凶と出るか。
出典 愛知県公式サイト プレスリリース
展示ホール6は唯一無柱空間となっていますが、広さは他のホール1~5と同じ1万平方メートル。過去に行われたBUMPやGLAYのライブツアーでは、可動間仕切りのある幕張メッセの9~11ホール(計1万8,000平方メートル)をぶち貫いて会場を設営しています。ロックフェスなどが行われているポートメッセなごやの第3展示館も、可動間仕切りによって最大1万3,500m²の連続した無柱空間にできますので、プレスリリースを読み通しても、今ひとつ掴みどころの無いスペックに落ち着いてしまっています。
近隣のコンサート・ライブ対応ホール(スタンディング型)
ポートメッセなごや 3号館 約1万3,500平方メートル 新国際展示場 ホール6 約1万平方メートル
近隣のコンサート・ライブ対応ホール(座席あり)
ナゴヤドーム 約1万3,200平方メートル・収容人数45,000人 ガイシホール 3,646平方メートル・収容人数10,000人 愛知県体育館 第一競技場 2,468平方メートル・収容人数7,407人 名古屋国際会議場 センチュリー 3,520平方メートル・収容人数3,012人
早くもボーリング調査が開始された、国際展示場予定地(2016年7月10日現在)
MEMO
出典・参考・外部リンク
※写真は一部を除いて2016年6月26日撮影。