「道路を憩いの場に」かつて官民が一丸となった全国初の試みが新宿で行われていました

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1986年、新宿駅東口から歌舞伎町方面へと抜ける1本の通り。そこはかつて違法駐車や違法駐輪、浮浪者、薬物売人の溜まり場となっていました。世界一巨大な鉄道ターミナルの傍らにありながら、人々を寄せつけない、恐怖で暗いイメージを払拭するために、新宿区と地元の新宿駅前商店街振興組合が立ち上がりました。

 

 

 

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初めに環境整備に着手した両者は、一帯を石畳やインターロッキングによる舗装に替え、ヨーロッパ風の景観を基調とした街灯を設置するなどハード面での整備に力を入れました。また、一帯の通行車両の流入を制限し、歩道と車道が一体となった空間を演出することで、ゆとりのある歩行者空間の整備を行いました。バブル期の真っ只中、まだ全国的にモールという発想が珍しかった頃、歌舞伎町の旺盛による街の品格の低下を阻止し、明るく健全な街並みを取り戻すべく、補助金も含め地元商店街が5~7億円をかけて整備を行いました。

 

 

 

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しかしバブルの崩壊とともにホームレスが増加し、放置自転車も後を絶たなくなるなど、道路を取り巻く環境は大幅に悪化していきました。月日は流れ、2005年9月、環境改善に悩む商店街は国土交通省道路局からの呼びかけで、地域主体での道路の二次的活用を目的とした社会実験への参加を機に、新たなステップを踏むことになりました。

 

 

 

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それは公道のど真ん中にオープンカフェを設営すること。

2005年の実験当初は新宿区が主体となり、沿道に店を構えていた店舗の協力を得て、約4ヶ月間(延べ54日間)の期間限定で道路上にカフェを設置しました。期間中、違法駐車や違法駐輪、不法占用は無くなりましたが、一回目の実験終了後に再び環境が悪化し、クレームも以前より増加したことから、翌年の2006年8月に2回目の実験を開始し、今度は期間を1年間に大幅延長させました。

 

 

 

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二回目の実験ではオープンカフェの実質的な事業者を募り、区主体から地元主体へと主導権を移して再度実験をスタート。メニューはより本格的に、カフェの数も2ヶ所に増やしました。このときのカフェはまだ仮設運営でしたが、新宿区が許可を出したことで再び道路上への設置が可能になりました。カフェは水道や電気といった最低限のインフラ以外補助は受けないものの、道路占用料が免除されるほか、カフェのスタッフが自発的に道路の清掃を行うことで、道路環境は劇的な改善を遂げました。

 

 

 

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2回目の実験ではカフェ利用者が一日平均500人弱。一息つくだけの人も含めると、その倍はいるとのこと。実験中、カフェの運営は赤字だったそうですが、2011年に都市再生特別措置法と道路法施行令が改正され、2012年にはその第一号案件として、常設カフェのオープンにまでこぎつけることができました一定の条件を満たすことで、道路上に常設の建物を建設することが可能になったためです。カフェの運営収益は、道路整備や防犯活動に役立てられ、2回目の実験から8年以上たった現在でも、新宿を行き交う人々に安らぎを与えつづけています。(この日は気温が35度近くに達する猛烈な暑さのため、残念ながら撮影時に利用者はいませんでした。)

 

 

 

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ここまで取り上げた「モア4番街」を含め、東西に伸びる新宿通りと靖国通りに挟まれた一帯の「モア街」は歩行者天国が当たり前の光景となっています。平日は夕方~翌早朝、休日は正午~夕方まで毎日実施されています。

 

 

 

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栄の場合、大津通りの歩行者天国は春・秋の限られた日数のみで、裏通りに至っては常時歩行者天国を行っている道路がありません。名駅も同様です。まとまった繁華街を抱えながら、パーキングに入る数珠繋ぎの車列、あるいはタクシーの客待ちで歩行者動線が分断されている現状は、個人的にはかなり異常だと思っています。目抜き通りを真っ先に規制すれば、当然裏通りが混雑します。ただでさえ車で出入り自由な裏通りが、大津通りの歩行者天国の日には車で埋まります。歩行者は思うように身動きが取れません。これではいくら何十億をかけて大通りの歩道を広げようと無意味です。個人的には、規制箇所の順序すら逆なのではと思います。店舗が建ち並んでいるのは大通りだけではないのです。根本的な交通政策の見直しなくして、栄・名駅の面的発展は無いと思っています。

 

 

 

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以前、広小路通で歩道を拡張する「広小路ルネサンス」構想がありましたが、その時名古屋市が行ったシュミレーションでは、広小路通の通行車両は最も混雑する休日の日中で69%減、逆に若宮大通は23%増、錦通は13%増という試算でした。その根拠は、現状の広小路通を東西に通過する車両は全体の20%、また沿道の駐車場に止めた車は7%であり、その他の車両は途中で右左折して別の通りへ入り込んでいる。よって他の道路へ迂回すれば車線減少しても問題ないというものでした。しかし、ここで迂回車両が裏通りに入り込んだ場合の裏通りの混雑に対する明確なシュミレーションが示されていません。「広小路の歩道を広げる」という構想ありきで、そもそも繁華街を“面”で捉えるという視点が欠落していると感じざるを得ませんでした。(数値の情報元は2007年8月31日の中日新聞より)

 

 

 

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写真は靖国通りの「歌舞伎町」交差点から今年4月にオープンした新宿東宝ビルへ至る「歌舞伎町セントラルロード」。毎日16時~翌5時(日曜・休日は12時~翌5時)まで歩行者天国となっています。官民が一体となり、誰もが安心して安全に楽しめる街にしようと計画された「歌舞伎町ルネッサンス」の一環として、新宿コマ劇場跡地の再開発とともに再整備され、良好な景観形成を行うための「歌舞伎町街並みデザインガイドライン」も制定されています。

 

※写真は栄の写真を除いて2015年7月25日撮影。

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