渋谷駅前では、2027年度にかけて鉄道各社や自治体などが一丸となり、100年に一度と言われる大規模な街区再編工事が行われています。駅前広場を中心とした土地区画整理事業に合わせ、2013年に東横線を地下化した東急電鉄に続いてJR・東京メトロが駅設備の大改造を行うほか、東急グループなどによる複数の超高層ビルの建設が進められるなど、副都心線の開業や東京駅前の再開発などで危ぶまれていた渋谷の求心力の低下を防ぐべく、かつてない規模での再開発事業が行われています。2020年に完成予定の、東京メトロ銀座線・渋谷駅の移設工事の様子を見てきました。
MEMO
超複雑な難工事
現在の銀座線ホーム
後に撤去予定の元々のホームは、既に仮受けされた状態となっています。JR線の高架を跨いでおり、非常にアクロバティックな構造は見ているだけでも興味深いですが、極めて限られた空間の中での作業の苦悩がうかがえます。右奥に見えるのは山手線内回りホーム。
山手線ホームの頭上に架かる銀座線(現在線)の桁。撤去にも相当な難工事となることが予想されます。
浅草方面行きの乗車専用改札口
浅草方面行きホーム(2番線)の浅草寄りに仮設の乗車専用改札口が設置されました。一見エレベーター棟に見えますが、内部は階段になっており、エレベーターはありません。
送り出し工法とは
作業は、写真中央の「P4橋脚」から、手前に設置予定の「P3橋脚」に向けて、浅草方面用の新しい桁(主桁)を架けます。今回のような、橋を架けたい箇所の真下で作業するスペースが十分に確保できない場合に、隣接地にて組み立てた橋桁をスライドさせることにより、橋脚に橋を架ける「送り出し工法」が用いられます。
これに対して、川の上に橋を架ける場合など作業スペースが十分に確保できるケースでは、トラッククレーンを用いて上から桁を吊り下げる「ベント工法」が用いられます。
少し引いたところ。手前の橋脚が設置されるスペースには、仮受け構台が待ち構えます。本設のコンクリート橋脚(P3橋脚)を設置する前に、桁を渡すと思われます。
出典 東京メトロ公式サイトより(再掲載)
移設後の銀座線渋谷駅平面図
「P3橋脚」と「P4橋脚」の位置関係です。架け替えにより、橋脚の数はホーム移設前の7基から5基に減ります。より耐震性の高い橋脚で、駅前広場を有効的に活用します。
重い桁をスライドさせる際には、桁が不安定な片持ち状態となり、たわんだり転倒したりするおそれがあります。そうした事故を防ぐために、桁の先に「手延べ機」と呼ばれる架設用の仮桁を設置します。手延べ機は桁よりも自重を軽くし、桁を送り出しながら少しずつ解体できるよう、切断もしくは伸縮しやすい構造となっています。
出典 東京メトロ公式サイトより(再掲載)
移設後の銀座線渋谷駅イメージ
上の写真とほぼ同じ方向からみたイメージパース。
さっきのアングルで、手延べ機を拡大してみる。
下から見た「手延べ機」。かなり簡易的な構造であるのがわかります。真下がバス専用の通路となっており、作業スペースが確保できないため、今回の「送り出し工法」が採用されています。
本設用の桁の下には、桁を送り出すための台車とレールが見えます。台車は桁を支えながら、作業用レールの上をゆっくりと動きます。送り出し作業に用いる駆動方法は、主に自走台車やレールを直接掴む「クランプ金具」の付いた水平ジャッキ(クランプジャッキ)などがあり、これらを組み合わせて使用します。
もう片側にもレールが2本見えます。ここからでは3本のレールしか確認できませんが、片側に2本ずつ、計4本の作業用レールが敷かれていると思われます。また、奥のほうにレールを掴んでいる機器が見えますが、これが水平ジャッキ(クランプジャッキ)かな…?(違ったらごめんなさい)
今回のケースと同様の事例です。桁の乗った台車をジャッキで引っ張りながら作業用レールの上を移動させることで、桁全体をスライドさせることができます。
↓台車や作業用レールの様子がよくわかる写真が載っています。
新しく架けられた本設桁の様子
一足早く架設が完了した、渋谷方面の新しい線路桁です。台形の真新しいコンクリート橋脚にしっかりと据わっています。
まだ本設のP3橋脚が見当たらないので、渋谷方面の線路桁も、P3地点で仮受けされている状態と思われます。
現在、明治通り上にある浅草方面の線路桁を、奥(現ホーム方面)へ向かって送り出します。渋谷方面の線路桁は、概ね架設が完了しているようです。
浅草方面の線路桁がすべて据え終った段階で、浅草・渋谷方面の現在線を両サイドの新しい線路桁へ移設し、中央の空いたスペースに島式ホームを設置します。
出典 東京メトロ公式サイトより(再掲載)
移設後の銀座線渋谷駅イメージ
パースにある線路桁の道床の形状が、実物と見比べると同じであることがよくわかります。
出典・参考・外部リンク