東京メトロは「伝統×先端の融合」をコンセプトに、2017年12月30日に開業90周年を迎えた銀座線の全面リニューアルを進めており、同月14日に銀座線上野駅のリニューアルが完了しました。銀座線は1927年に浅草~上野間で開業した日本で初めての地下鉄であり、現在も同社のドル箱路線の1つとなっています。リニューアルに至っては、その特設サイトからも気合の入りっぷりがうかがえ、2020年以降もまだまだ銀座線のリニューアルは続くようですが、上野駅のインパクトが特に強いということで、見てきました。
メトロ上野駅について
東京メトロの上野駅には、銀座線と日比谷線の2つの路線が乗り入れており、互いに改札・コンコースが独立しています。なお、今回のリニューアルでは、元々あった構内店舗を改装したエキナカ「Ehika fit 上野」が開業していますが、そちらは当記事では割愛しておりますので、詳しくはこちらをご覧ください。
既にコンコースから演出が凄い!
銀座線上野駅 コンコース(改札外)
早速内部へ潜入してみます。レポート時はリニューアル完了後半月程度しか経っていないためか、行き交う人々の大半がその変貌ぶりに驚いた様子でした。
早速、通路中央部にインテリア感ありつつも見慣れない構造の柱を発見。
近くで見ると、正八角形の柱を、四面のガラススクリーンで覆うという柱 in the 柱のような状態。さらに底面は全面ライトアップという凝った演出。
ガラススクリーンの中をよく見ると、柱本体の表面に舞い上がる桜の花びらがあしらわれています。通り過ぎただけではなかなか気づきにくい。
天井は圧迫感を避けるためか、あえて全面を天井板で覆うことはせず、昔ながらの梁も見えるようになっています。配管も新しいものに交換した上でそのまま這わせてあり、剥き出しが当たり前だった昔の地下鉄駅の雰囲気を残しているのかもしれません。
床タイルは暖色系でシンプルに。
こちらは銀座線改札から上野マルイ方面と日比谷線改札方面へY字分岐する地点で、コインロッカーもありちょっとした広場になっている。冒頭の構内図中の「現在地」にあたる地点。
こちらも正八角形の柱に、木の装飾が施されています。人が滞留することを想定してか、簡易ベンチを併設。狭い空間を効率よく活用しています。
さらに柱の足元を見ると、ピンコロ舗装のような細かい天然石のタイルが敷き詰められています。ここまでやるとなれば、装飾だけでもかなりのお金がかかっていることでしょう。多数のドル箱路線を抱える東京メトロでなければできない神業です。
エレベーターの柱も同様のデザイン。
日比谷線連絡通路(銀座線改札側から)
右側の広告スペースの壁にも、先ほどの柱と共通のデザインが施されています。
通路の片側には内照式のガラススクリーンがずらりと並び、駅構内の中でもひたすら目立つ、ずば抜けて明るい空間。
そしてスクリーンの表面には、おなじみの上野公園の桜が浮き出る。かなり芸が細かい。
銀座線・日比谷線連絡通路(日比谷線改札側から)
通路は銀座線に向かってゆるやかな上り坂となっています。銀座線の線路が地上から浅い位置にあることと関係があるのでしょうか。
ここにも先ほどの正八角形の柱。梁にも木材が使用されています。近くで見ても、おそらく特殊加工された本物の木材のように見えます。
日比谷線改札口付近
これまで暖色系で固められたデザインとは打って変わって、日比谷線側は白と黒を基調としたシンプルな空間に。メトロの乗換駅では、路線ごとに異なる空間デザインが用いられる場合が多いようです。今回日比谷線改札の紹介はこれにて割愛。
戻って、いざ銀座線ホームへ
銀座線改札口(銀座・渋谷方面のりば)
いよいよ一番楽しみにしていたホームに下りてみます。改札口の柱には、大きく「1」と書かれた数字と、横には方向別表示にナンバリングを用いた斬新なデザイン。訪日観光客にも分かりやすい表示を意識したものと思われます。
銀座線改札口(浅草方面のりば)
こちらも同様のデザイン。頭上には銀座線のイメージカラーがライトアップされ、JR東京駅のコンコースにデザインを似せています。(当駅は「JR上野駅方面改札」がメイン扱いとなっており、写真の改札は「上野公園方面改札」のため少し手狭になっています。)
”地上に最も近い地下鉄”を特徴とする銀座線のホームは、改札口からもかなり浅いところにあります。ちょっと階段を駆け下りればすぐホームです。
銀座線ホーム
これがリニューアルによって生まれ変わった、古き良き重厚な石造りの美術館をイメージした全く新しいホーム。ホーム可動柵は、一足早く2016年3月に設置され、上野動物園のパンダと桜をモチーフにしたイラストが描かれています。全駅でホーム可動柵の設置を目指す東京メトロは、銀座線でも改修中の渋谷駅と新橋駅を除いて2018年度に設置が完了する予定です。
扉が開くと、桜とパンダが1つの小窓に現れるちょっとお茶目な遊び心。
ホーム柵はデジタル情報板が埋め込まれたハイテク版。
列車接近表示器
銀座線上野駅の構内には、随所に「Ginza Line Archive」と称した銀座線の歴史にちなんだ展示があります。この接近表示器は、昭和49年から平成29年まで実際にホーム上に設置されていたものだそうで、撤去されずにそのまま保存されています。
しかも「動態保存」となっており、実際に電車が接近すると、現役当時と同じように進行方向に向かって左から右へ順番に電車の絵柄が点灯します。
壁という壁もすべて石のタイル(花崗岩?)で覆われています。消火栓の扉まで石で出来ているのには参りました。
「消火栓」の文字もペイントではありません。直接石に彫り込まれています。とにかく相当の手間がかかっていると思われます。
そして広告枠は二重構造になっており、表面のガラススクリーンの奥は煉瓦が敷き詰められ、ガラススクリーンの内側にはLED電飾が施されるというバブル仕様。
斜めにせり出た石の壁をくり貫いた部分に、表示板や消火栓やベンチなどの空間が設けられています。もうお腹いっぱい。
しかし一番雰囲気が出ているのはこの丸柱でしょうか。つい触りたくなる石造り独特の質感が素晴らしいです。
この柱頭は古代ギリシア建築(といっていいのかな?)を彷彿とさせる意匠。おまけにパッと見気づきにくい天井パネルにまで柄が入っています。
この空間が鉄道博物館の一角にでもあったら、普通にこのホームの見学だけで金取ってもいいんじゃないかというレベル。
極め付けはこのナンバリング!まさかこれも……
やっぱり彫られている!!!!いや、彫って埋めているのか。どちらで造られたものかは分かりませんが、これぞ職人技。
さすがに軌道には何も仕掛けがなさそう…
と思いきや、軌道中央の柱に設置された点灯していない謎のライト。
電車が接近すると…
ライトアップ!!(点滅)
さて、見所が多すぎてこのホームでどのくらいの時間を費やした過ごしたか分かりませんが、私はここから新橋駅まで向かうことに。
最後に地上部分も
改札を入る前に一旦地上へ上がってみました。こちらの階段は古い部分はどこにも見当たりません。階段には御影石を採用。
出口上屋もリニューアルさて、一部が完全防水型に。
外部リンク 銀座線リニューアル情報サイト(東京メトロ特設ページ)
外部リンク 駅チカ商業施設「Echika fit 上野」が生まれ変わります。(東京メトロ プレスリリース)
※すべて2017年12月31日撮影。