東京駅・丸の内エリアのランドマーク、「丸ビル」や「新丸ビル」に面した「丸の内仲通り」では、今年も「丸の内イルミネーション2016」が開催されています。メイン会場の丸ビルのほか、三菱地所が所有する5つの複合ビルが連携して取り組むクリスマスイベント「Marunouchi Bright Christmas 2016~不思議なくるみ割り人形の物語~」との相乗効果もあり、厳しい寒さにもかかわらず多くの観光客で賑わっています。
「人・車」の垣根を超えた 長い取り組み
「丸の内仲通り」は、90年代半ばにオフィス需要が減衰し始めた「丸の内エリア」の活性化に取り組むべく、行政と沿道に複数のオフィスビルを所有する三菱地所が、「丸の内の骨格軸」として古くからイメージアップに力を入れてきました。特に歩行者天国などの取り組みは30年以上前からあり、99年~2005年まで開催された「東京ミレナリオ」、2004年に実施した歩道でのオープンカフェの社会実験といったソフト面でのPR活動と並行し、2002年頃からハード面による「丸の内仲通り」の本格的な再整備事業が始まりました。
歩車道一体の空間
再整備によって歩車道の幅員(m)は従来の「6:9:6」から「7:7:7」に統一し、アルゼンチン斑岩(公式サイトによる)のタイル舗装は歩車道ともに共通のデザインとなりました。また、車道と歩道の境界はほぼフラットに近く、歩行者天国時には気兼ねなく道路を横断できるようになりました。ここに大きな段差があるかないかでは、実際に歩いてみて歩きやすさが格段に違います。単にバリアフリーの観点ではなく、健常者から見ても歩きにくい道路は街の賑わい創出の大きな妨げになっていると思います。極めて単純な問題なのかもしれませんが、意外と街づくりの盲点になっているケースは多々あります。
落葉樹採用の理由
仲通りの街路樹は、代表されるケヤキのほかシナノキやカツラなどの落葉樹が多く植えられています。特に落葉の多いケヤキを積極的に採用したのは、春夏には緑陰、秋には紅葉を楽しみ、沿道のショーウィンドウとともに四季を感じられる通りにしたいという三菱地所の想いと、落ち葉掃除も苦としない同社を中心としたエリアマネジメント力の賜物です。
無機質なオフィス街からの飛躍
「丸の内仲通り」の再整備に合わせ、沿道にはブティックが多数軒を連ね、道路上にはキッチンカーやオープンカフェが設置されるようになりました。また沿道に立地する「丸ビル」や「新丸ビル」の建替え事業も追い風となり、これまで金融機関に特化したオフィス街の印象を大きく刷新し、ニューヨークの「マディソン・アヴェニュー」、ロンドンの「ボンド・ストリート」とパートナーシップ協定を結ぶ一大ショッピングストリートとなりました。
丸の内通りとの交差点の部分は、目の細かいキューブ(ピンコロ)舗装となっています。交差する道路は車両の往来がありますが、連続したデザイン舗装により仲通りのシンボル性を強調させ、歩行者優先の空間を主張しています。
従来オレンジのペイント標示であるはずの「速度制限」標示も、目立たないホワイトのタイルで模られています。元々が白の横断歩道や「止まれ」のタイル張りはよくありますが、この手の標示を例外的に変更できるのは意外でした。このタイルの質感を踏みしめながら歩けるのも丸の内仲通りの楽しさの1つと言えます。
丸ビル前
歩行者天国の横断歩道でストリートパフォーマンスと遊ぶ子どもたち。こんな光景は従来の丸の内エリアでは見られなかったことでしょう。
丸ビル前から大手町方面
丸ビル北側で交差する行幸通りと東京駅(奥)
廃止となった行幸通りとの交差部
行幸通りの馬車道空間(中央帯)再整備に伴い、交差する「丸の内仲通り」の一部が廃道となり、車での南北の通り抜けができなくなりました。高度経済成長期にモータリゼーション化の波を受けて幅12mから21mに拡幅された丸の内仲通りは、時代の移り変わりとともに歩行者主体の通りへと生まれ変わり、再整備により一般開放された馬車道空間と融合し、新たな都市空間を創出しています。
【参考】丸の内仲通り ~エリアマネジメント~(三菱地所公式サイト)
【参考】連載:ものづくりの視点 街の居間となった丸の内仲通り(三菱地所設計公式サイト)
【丸の内イルミネーション 点灯スケジュール】(丸の内ドットコム)
2016年11月10日(木)~2017年2月19日(日) 17:30~23:00(予定)
※12月1日(木)~28日(水)まで 17:30~24:00点灯
※12月1日(木)~28日(水)まで 丸ビル前~丸の内パークビル前 11:00~21:00まで車両交通規制。
※すべて2016年12月10日撮影。